コレクション: 椿窯(島根県)

椿窯とは

島根県で「半胴(はんど)」と呼ばれる水かめ作りから始まった「温泉津焼(ゆのつやき)」の窯元のひとつ、「椿窯」。 京都で作陶していた荒尾常蔵が、1969年に温泉津に移住し開かれた窯です。

現在は五代目の荒尾浩之さんが作陶しており、IEGNIMでは浩之さんが作った植木鉢を販売しています。マットな質感の黒地の植木鉢は現代のインテリアに馴染みやすく、植物の鮮やかな色彩を引き立てます。

温泉津焼とは

江戸時代宝永年間(1704年)に始まる。前述の半胴を日本各地に出荷し大いに栄えた。昭和40年代、化学製品(プラスティック)の発達により一時は衰えたが、その後、窯を再興させての製作活動が行われている。耐火性の高い石見粘土を使用し、高温(1300℃)で焼成することで硬く割れにくい点が特徴。

「温泉津やきものの里」にある登り窯。現在は市が所有している。

 

現在温泉津では陶芸作家・河井寛次郎の流れをくむ3軒の窯元が、日常の暮らしになじむうつわを作っています。

3軒の窯元のひとつ「椿窯」。
そのひとつ「椿窯」の荒尾浩之さん。父である荒尾浩一さんに師事したのち、現在は五代目の代表を務めています。

温泉津の象徴とも言える巨大な登り窯。現存しているのは2基で、登り窯を使うのは春と秋の年2回。湯呑みであれば1回の焼成で500個以上焼けるそうです。

35時間焼きっぱなしで使用する薪はだいたい600束くらい。窯の中の焼成温度は1300℃以上に達します。共同窯で、各窯元によって焼き方が微妙に違うので釉薬が溶けてなかったり、炎の方向に器が引っ張られ変形してしまったり。登り窯は、本当に焼いてみて窯出しをしてみないとわからない難しさがあるそうです。

2回の「やきもの祭」の1週間前、登り窯に炎が入る様子を見ることができます。

 今回IEGNIMのために日本最大級と言われるこの登り窯を使い作っていただきました。民藝では珍しい黒。浩之さん曰く、「他とは違う」という艶消しの黒はキラッと光る部分も。これは薪を入れることによって器に灰がかかりそれが作用してのことです。

さらに、浩之さんも「誰しもができる“赤”ではないというところのこだわりを持ちたい」と語るほど印象的な“赤”を配したうつわは、登り窯で焼く上で表現できるかどうかわからなかったそう。そんな難しい状況から生み出された貴重なうつわとなっています。

(写真:藤井由依)

IEGNIMでは浩之さんが作った植木鉢を扱っていますので、気になる方は下記からご覧ください。

荒尾浩之さんへのインタビュー