敷地内に入るとすぐに目に飛び込む「ガラス工房 清天」の文字。これは、「ガラス工房 清天」 を立ち上げた松田清春さんが手がけたもの。
松田「清」春さんが「天」を目指すという意味で名付けられています。
廃瓶を再利用する、昔ながらの琉球ガラスの製法で作り続ける「ガラス工房 清天」の松田清春さんにお話を伺いました。
松田清春(まつだ きよはる)さん プロフィール
1963年、沖縄県生まれ。中学校卒業と共に琉球ガラスを始める。その後、いくつかの工房で働き琉球ガラス以外の職業も経て、1997年 に「ガラス工房 清天」 を立ち上げる。
チームプレーで出来上がる、ガラス工房 清天の器
焼き物が盛んな土地、沖縄県読谷村にあるガラス工房 清天。
30度を超える暑さのなか、朝から職人達が器作りに励みます。ガラスの器作りにはいくつかの手順がありますが、それぞれの工程ごとに職人がおり、一人一人が同じ作業をやって、流していくとのこと。まるで一流サッカーチームのパス回しのように、隙のない連携で器が作られていきます。


水飴のようにドロドロに 溶けたガラスを、吹き竿に巻き付けているところ。ここから器作りはスタート。

巻き取ったガラスで「下玉(しただま)」という土台を作り、それを吹くことで基本の形に成形。
グラスの口となる部分にくびれを作っていきます。
グラスの底となる部分を平らにしたあと、ポンテ竿と呼ばれる棒をつけて、先ほど作ったくびれの部分から切り離します。

何度か焼き戻して形を整えつつ、グラスの口径を広げていきます。
急激に温度が下がると爆発してしまうため、700度の除冷窯(じょれいがま)で一日保温して出来上がり。
ガラス工房 清天の成り立ち

職人に適宜指示を出しつつ、仕上げの工程をしている松田清春さん。中学校を卒業した15歳のころから働いているという松田さんが1997年に始めたのが、このガラス工房 清天です。
「ちょうど35歳の誕生日に始めたね。当時いた工房が会社を閉める時に、じゃあ(自分で)始めようかと。まわりからも『このくらいの腕があるんだったら、自分で工房立ち上げてやったほうがいいよ』って言われてね」
再生ガラスを使って「良い物を作る」
ガラス作りのために調合・製造される、いわゆる「原料ガラス」を使うところも多いですが、ガラス工房 清天では泡盛の瓶を中心に、廃瓶を利用した「再生ガラス」で器作りをしています。
「15歳の時にいた『大謝名琉球ガラス』が、廃瓶からやってた工房だったからね。自分はあちこちの工房に入って、いろんなガラスを触ってきたわけ。窓ガラスとか電球とか、強化ガラスとか。でも自分でやるなら廃瓶が良いなと。そこから始まったんだよ」
廃瓶は回収業者から仕入れて使い、ガラスに色をつける際は緑と茶は瓶の色をそのまま使って、他の色は透明のものに薬品で着色しています。
全て注文を受けてから作っており、一日に多い時で120個、少ない時でも80個作るそう。その生産量の秘密は、再生ガラスを使うことにも由来がありました。
「再生ガラスは”硬い”わけ。冷めるのが早い。技術が必要な面もあるし、ラクじゃない。でも生産性は上がる。原料ガラスは(冷めるまでの)足が長いから、1個作るのに時間がかかるんだよ」
冷える前の柔らかい状態で作った形が、出来栄えを左右するガラス製品。その中でもさらに冷めるのが早い「再生ガラス」を使うからこそ、職人同士の連携プレーは必須だったのです。
また、昔ながらの製法では廃瓶の管理が行き届いておらず、鉄くずなどが入ってしまっていても生産を続けていたそうですが、くずやゴミが取り除き、廃瓶を利用していても質の良いものを作り上げるのが「清天の目指すところ」だそう。

最後の仕上げの様子。この段階で鉄くずやゴミなどを除去していきます。
技術の賜物「Sモールグラス」誕生秘話

ガラス工房 清天といえば、川の流れのような連続した曲線が美しいSモールグラス。
「妻がデザインして、それを作り上げたのがきっかけ。あの形は琉球ガラスにはなかったからね」とのこと。
ガラスの器作りの終盤工程である、グラスの口径を整える段階では通常行わない、ガラスを逆向きに捻る作業によって、この模様は生まれます。

口径を広げるだけでも高い技術が必要ですが、その前にガラスを逆向きに捻る工程が出来るのは、熟練の技があってこそ。
Sモールグラス以外にも、様々なデザインがガラス工房 清天では作られています。
「気泡系とか、水面(みなも)。ダイヤ柄とかね。気泡はガラスを膨らます前の下玉の時に、剣山を使ってやるわけ。だから(吹いた時に)点がもっと広がって、出来上がる」

気泡の模様を作る時に使われる剣山。

工房に併設されたショップには多種多様の器が並びます。
大事なのは「ガラスと友達になること」
インタビューをしている間にも、いくつもの器が生み出されていくスピード感のある現場ですが、そこには松田さんなりの器作りの流儀がありました。
「一番大事なのは、ガラスと友達になること。それもただのガラスじゃなくて、”溶けたガラス”と友達にならないとね。職人のみんなにそう言ってるよ。あとはラクに、綺麗に、早く。そうしないとガラスが冷え切って、最後まで作り上げることはできない。ラクに、っていうのは、技術が上がらない限り、ラクにモノ作りはできないっていう話さ」

そんな教えをもとに、でく工房の中村 一也(なかむら かずや)さんをはじめ、これまでに独立した職人は7〜8名ほど。それぞれの場所で活躍している職人を育てた松田さんは、「どんどん新しい商品を作っていきたい、それが楽しい」と無邪気な笑顔で語り、次の定番を生み出すため、今日も作り続けています。
写真/藤井由依 取材・文/小野光梨(Roaster)
